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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
「まったく早水さんの剣はふしぎな味をもっていますね」
「そういう太橋さんもなかなかやるじゃないか、上原道場で二本と云われているだろう」
「鼻下の二本でしょう」
大助はそう云って笑い、さてというように坐り直した。座敷のほうでは梅八のさびた声で唄うのが聞えていた。
「さて五六日まえに校川さんがみえました」集まりの主題になったが、みんな盃を手にしたままだし、かくべつ密談をしているような風は誰もみせなかった、「精しいことは仰しゃりもせず、うかがいも致しませんでしたが、かねての事をいよいよ実行する御決心のようにございました、それについてわたくしに、木曽駒の買付けと、大阪の倉にある銅鉄の積み出しを、さしずしだいにとり計らうようとの御命令でございます」
「それは亀阜荘さまと連絡をとったうえのことかしらん」
「おれは初耳だな」平馬が不審げに首を振った、「だいいち左近さまは、まわりでそういう話がでるたびに、暴挙だと仰せられているくらいだ、高松を出て来るまでそんなはなしはなかったよ」
「それは校川さま御自身でもそう仰しゃっていました、高松とはもちろん、江戸屋敷のかたがたとも別行動のようでございます」