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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

それでかれもあとを追っていった。秀之進は宿の者に傘と履物を借り、「ちょっと歩いて来る」と云って、雨のなかへ出ていった。

大助もいっしょにゆこうとして傘と履物を出して貰い、門口から出ようとしたが、ふと身を翻して、戸袋の蔭へ隠れた。……いましも二人の武士が、向うの家並の軒下づたいに秀之進のあとを跟けてゆくのが見えたからである。

跟けているとみたのは直感だった。男は二人とも宿の着物に宿の傘をさしている。無腰だし、手拭を持ってふらっと出た恰好であるが、その眼つきと歩きぶりは前をゆく秀之進を覘っていた。大助にはその「覘っている」という感じがぴんときたのだ。――新島ではない。二人はすぐに大助の視野から外れていったが、新島八十吉ではないことはたしかだった。

それで一応は思い違いかとも考えたが、すぐに二つの仮定が頭へうかんだ。その一つは新島の助勢ではないかということ、次は幕府の探索ということだった。

――新島が此処へ来るまで手を出さなかったのは、この助勢の追いついて来るのを待っていたからだと云える。

――幕府の探索ということも有り得ないことではない、太橋一家はだいぶ睨まれているから。