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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
座に就くなり左近が云った、「いつ追放となるか、日時はわからぬが、二人が追い出されることだけはたしかだ、栗林の不浄門を見張っておれば誤りはないと思う、あとのことは見ぬふりをせよと申して置いた」
「御厚志なんともおん礼の申上げようがございません」久木が丁寧に礼を述べた、「御配慮に依りまして、事が穏便におさまりまする、かたじけのう存じ奉りまする」
「われわれは勿論」とそばから魁介が云った、「御当家のおんためにも、不要のいざこざなしに相済んで、祝着に存じます」
勃然たる眉つきであった。かれにすれば、それでも寧ろ云い足りなかったのである。大峰、矢田部の二奸賊のために、ここまで出かけて来なければならなかったのは、ひとえに高松藩が二人を隠匿したためである。礼を述べるどころか、逆に詫びを求めたいところでさえあった。……魁介の気持はそのまま左近に通じた、けれどこちらは穏やかに笑った。
「粗飯ではあるがいま支度をさせておるから、夕飯をたべてゆくがよい、捨て扶持の身の上でもてなしもできぬが」
「お側に早水秀之進と申す仁がおりますか」
久木が訊いた。
「早水……ああ、家臣ではないが、眼をかけておる者にいる」