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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
左近はたたみかけた、「このたび水戸への使者を申付けたのも、そのほうに会って添書をたのめと申したのも、余にすれば秀をそのほうに対面させたいと思ったからだ、そのほうは知らぬであろうが、秀は学芸武術にすぐれた質をもっている、うまく伸びれば御国の役にたつべき者だ、……しかしかれには心の傷があって」そう云いかけて、左近頼該はふと苦しげに眉をひそめた、「……世事人情を疎んずる風がある、なにごとにも夢中になれず、燃えあがるということができない、その根は、おのれが日蔭の生れだということ、実の親にみはなされた、ということ、この点だった、世間に例のないことではなし、他人にはさほど問題にすべきことではないと思えるが、かれにはその根が一生を支配する大きな悩みのもとだった、余はその悩みをとってやりたかった、心の傷をとって、御国の役にたつべき資質を生かしてやりたかったのだ」
「思召しのほどは、わたくしにも相わかりました、はじめて訪ねてまいりました夜、正直に申せば……」宗兵衛はぐっと唾をのんで、「わたくしは、あれに会うことが辛うございました、父子らしい言葉を交わそうと努めましたが、どうしてもそれが口に出ず、あれもなにやら隔てありげにて、ついによそよそしく別れてしまったのでございます、水戸からの戻りに、再び訪ねてまいりましたおり、このたび