轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
こそはと存じました、このたびこそ、そう存じましたが、そのときはもう、父子の情などははいり込む隙もないほど、かれのようすは変っていたのでございます」
「秀のようすが変っていた」
「変っておりました」宗兵衛はその夜のありさまを回想し、甦ってくる感動をそのまま伝えたいというように、双眸をうるませながら云った、「あれは正しく時勢の大きさを正しく視ております、自分の出生についても、生みの父に対する怨みも、あれの心にはもうあとを留めません、……あれには、父とか子とかいう考えすらなくなって、ただ共に死ぬべき同志としてわたくしをみるようになりました」
「共に死ぬべき同志とは」
「あれは……彦根城攻略の旗挙げに加わる所存だと思います」
左近はさっと眼の色を変えた。
「彦根を攻めると」
「わたくしの企てたものでございます、失敗するのは明らかですが、もう誰かがなに事かをなさぬといかぬ時期です、わたくしは拳を空に揚げるだけの意味で、事を計りました、それを若い者共がとって代ったのです、……恐らく秀之進はその挙兵に加わるため、或る用務を帯びて木曽へまわる太橋の大助と同行したのでございましょう、信州の出来事はその途中のことと存じます」