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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
骨を断つ刃の音で、秀之進がそう呟いたとき、塀際に追いつめられた五人は、ばらばらと踵を返して逃げた。
逃げだした五人の背へ、源十郎が待てこいつらと喚いた。本当にうしろから斬りかけそうな声だった。ぺっと唾を吐きかけ、臆病者めと罵って、いかにも口惜しそうに首を振りたてた。
討手の人々は二人をもう仕止めていた。秀之進が近寄っていくとみんな刀をぬぐいながらこちらへ会釈をした。
「御助勢くだすって忝ない」
そう云いながら前へ出て来たのは久木直二郎だった。秀之進にはすぐわかったし、意外な対面でちょっとまごついた。
「やあ、久木氏だな」
直二郎もあっと云った。こういう会いかたをすべき筈ではなかった。こんど出会うときには、竹隈の藤田家でとり交わされた問答の解決に当面しなければならぬ。たとえ秀之進は好まぬにしても、直二郎は到るところでそう宣言してきた。だからこのような会い方になったことは、直二郎はいうまでもなく、秀之進にもかなり具合の悪いことだった。
「いや、はなしはあとのことにしましょう」秀之進が先を越して云った、「逃げていった者が加勢をつれて来るかも知れない、此処は構わず立退いて下さい」