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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

秀之進は、「二人へおかかりなさい、あとは拙者がひきうけた」そう叫びかけておいて、護衛の五人をぐんぐん塀際へ追い詰めた。それで大峰と矢田部は、走せつけて来た討手の人々にまったくとりかこまれたのである。瘤の源十郎もその人々といっしょに来たとみえ五人をひきうけたのが秀之進だと知ると、「よう来ていたのか、秀さん」と叫びながら駆け寄った。

「いかん、乱暴なことはいかん、二人を討たせさえすればいいんだ、この連中に罪はない、抜くな」

「だがこいつらは滝川内膳の走狗だぞ」

「それとこれとは違う」秀之進はきっぱりと押えつけ、五人のほうへ刀をつきつけたまま、訓すような調子でこう云った、「お手前たち、ごらんのとおりもう役目は済んだ、お退きなさい」

「…………」

五人は抜いた刀を構えているのが精いっぱいで、反撃する元気もなく、といってすぐ逃げだすわけにもいかず、ひどく具合の悪い立場に立ってしまった。

「大峰庄蔵、矢田部源七郎」

六、七間はなれた道の上で大きく叫ぶのが聞えた。天誅だという言葉につづいて、わっというような声と、地を蹴る人の足音とが、深夜の空気をぶきみに震動させた。

――やった。