轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

「ならば折をみて」と寅寿はべつにありがたそうなようすもなくそう云った、「高松のほうへでも送って頂きましょうか、その方がさらに安全でござろうから」

とにかく二人に会おう、内膳はそう云って、供待ちにいる大峰と矢田部を呼ばせた。大峰庄蔵は眉の太い頬骨の尖った男で、彫りつけたような深い皺が二本、ぎゅっと額を横にひいている。矢田部源七郎はごくあたりまえな顔だちで、どこという特徴もなかったが、身ごなしや言葉のはしはしに、どこやら粘りつくような、芯の強さが感じられた。

「よろしくおたのみ申します」

寅寿の紹介で、二人はそれでも鄭重にそこへ手をおろした。

「のっぴきならぬ事情ゆえ、ともかくもお匿まい申すが、当家とても存じの如く以前とはいろいろ都合も変っておる、たのみ甲斐なしとも思われようが、いざという時の覚悟はして置いて呉れるよう」

「おたのみ申す以上その覚悟はございます」庄蔵がはっきり答えた、「万一の折には、決して御当家の御迷惑とならぬよう自決を致します」

「そのお覚悟さえあればできるだけのお世話は仕る、いまも結さまのおはなしで、よき折もあらば高松へ移したらということであった、さいわい来月には当お上が参覲のおいとまにて御帰国のはずゆえ、そのときまでには方策をたてると致そう、それまでは窮屈を辛抱して貰わねばならぬ」