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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

新島八十吉が手紙で呼んだのは此処の藩の目付だといった。それは大助がここに知人はないのかとたずねたことから思いついたのだ。そして目付を呼んだとすれば秀之進の手配をたのんだのに違いない。さっき八十吉となにか牒し合せて出ていったのは、おそらく街道口をかためる非常手配のためだろう。――しかも早水はそれをまだ知らずにいるんだ。今までの好奇心などはけしとんで、大助はまっしぐらに松八をとびだした。どんなことをしても早水に追いつかなくてはならぬ、かれが道を塞がれない前に、少なくとも新島の手中に落ちない前に……。

風立ってきたとみえ、往来へ出ると乾ききった道に埃が舞いたっていた。大助はその埃に追われるように、道を北へと急ぎだした。すると、町はずれへかかるところで、うしろから駆って来た騎馬の侍たち十騎に追いぬかれた。

――目付役の者たちだ。

そう思い、自分も馬でとばさなくては間に合わぬと気づいた。しかし馬を雇うには町の中まで戻らなければならぬ。

――戻るひまがあるかしらん。

はたと大助は当惑した。どうしよう、とっさの決断に迷っていると、すぐ右がわの家並の間から呼ぶ者があった。