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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

大杉が果してスパイであった乎否乎の謎は大杉自身が鍵を握ってるので、余人の推測は余りアテにならないが、大杉がもし果して真にスパイであったなら問題の何とかいう男のように月給何百円も貰って自働車で出入しないまでも最う少し貧乏しないでも済んだろう。貧乏してまでも同志を欺く苦肉の謀をしてお上の御用を勤めていたというなら、それこそ楠正成ほどでなくとも赤穂の義士ぐらいに値踏み出来る国家の功労者である。沖や横川と一緒に招魂社に祀られてもイイわけだ。

大杉は時偶金が手に入るとむやみと自働車を飛ばしたりして不相当な贅沢をするので同志者の反感を買った。この贅沢の資本がもしスパイの報酬として請取った金なら公々然と同志の前で札びらを切る事は豈夫出来なかったろう。大杉は一時は米塩にも事欠いた苦境に苦んでいた事もあったが、最後の柏木に落付いた時は八十円の家賃を払い、奉公人も置き、夫婦から児供までが洋装でかなり贅沢な生活をしていた。が、これがもしスパイの余得であったなら同志を欺くためにもこういう不当所得の看え透かされるような真似は決して做なかったろう。

大杉が誰の口入であったかまたどういう名目であったか知らぬが後藤子爵から若干金(タシカ三百円だと思った)を貰ったのは大杉自身から聞いている。