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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

段々訊くと、予てから猫の産月が近づいたので、書斎の戸棚に行李を準備し、小さい座蒲団を敷いて産所に充てていたところ、昨夜は宵から容子が変なので行李の産所へ入れるとは直ぐ飛出して息遣いも苦しそうに※々啼きながら頻りと身体をこすりつけて変な容子をする。爰で産落されては大変と、強に行李へ入れて押え付けつつ静かに背中から腰を撫ってやると、快い気持そうに漸と落付いて、暫らくしてから一匹産落し、とうとう払暁まで掛って九匹を取上げたと、猫のお産の話を事細やかに説明して、「お産の取上爺となったのは弁慶と僕だけだろう。が、卿の君よりは猫の方がよっぽど豪かった、」と手柄顔をした。それから以来習慣が付き、子を産む度毎に必ず助産のお役を勤め、「犬猫の産科病院が出来ればさしずめ院長になれる経歴が出来た、」と大得意だった。

不思議な事にはこれほど大切に可愛がっていたが、この猫には名がなかった。家族は便宜上「白」と呼んでいたが、二葉亭は決して名を呼ばなかった。「名なんかドウでも好い、なくても好い、猫に名なんか付けるのは人間の繁文縟礼で、猫は名を呼ばれたって決して喜ばない、」といっていた。