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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
明治四十一年の春、ダンチェンコが来遊した。二葉亭は朝日を代表して東道の主人となって処々方々を案内して見せた。ダンチェンコは文人としては第二流であるが、新聞記者としては有繋に露西亜有数の人物だけに興味も識見も頗る広く、日本の文人のような文学一天張の世間見ずではなかった。随って思想上に契合するものがあってもなくても、毎日々々諸方を案内しつつ互に宏博なる知見を交換したのは、あたかも籠の禽のように意気銷沈していた当時の二葉亭の憂悶不快を紛らす慰藉となったらしかった。
ダンチェンコは深く二葉亭に服して頻りに露都への来遊を希望し、かつ池辺三山及び村山龍平に向て露都通信員の派遣を勧告し、その最適任者としての二葉亭の才能人物を盛んに推奨したので、朝日社長村山も終に動かされてその提案に同意した。耆婆扁鵲の神剤でもとても癒りそうもなかった二葉亭の数年前から持越しの神経衰弱は露都行という三十年来の希望の満足に拭うが如く忽ち掻消されて、あたかも籠の禽が俄に放されて九天に飛ばんとして羽叩きするような大元気となった。その当座はまるで嫁入咄が定った少女のように浮き浮きと噪いでいた。