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ふたばていよだん

新編 思い出す人々

内田 魯庵

内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页

青空文庫

伊藤は牙籌一方の人物で、眼に一丁字なく、かつて応挙の王昭君の幅を見て、「椿岳、これは八百屋お七か」と訊いたという奇抜な逸事を残したほどの無風流漢であった。随って商売上武家と交渉するには多才多芸な椿岳の斡旋を必要としたので、八面玲瓏の椿岳の才機は伊藤を助けて算盤玉以上に伊藤を儲けさしたのである。

伊藤八兵衛の成功は幕末に頂巓に達し、江戸一の大富限者として第一に指を折られた。元治年中、水戸の天狗党がいよいよ旗上げしようとした時、八兵衛を後楽園に呼んで小判五万両の賦金を命ずると、小判五万両の才覚は難かしいが二分金なら三万両を御用立て申しましょうと答えて、即座に二分金の耳を揃えて三万両を出したそうだ。御一新の御東幸の時にも、三井の献金は三万両だったが八兵衛は五万両を献上した。またどういう仔細があったか知らぬが、維新の際に七十万両の古金銀を石の蓋匣に入れて地中に埋蔵したそうだ。八兵衛の富力はこういう事実から推しても大抵想像される。その割合には名前が余り知られていないが、一生の事業と活動とは維新の商業史の重要な頁を作っておる。今では堀田伯の住邸となってる本所の故宅の庭園は伊藤の全盛時代に椿岳が設計して金に飽かして作ったもので、一木一石が八兵衛兄弟の豪奢と才気の名残を留めておる。