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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
書画会を開かない画家文人は殆んど一人もなかった。
この書画会の肝煎をするのが今の榛原や紀友のような書画の材料商であって、当時江戸では今の榛原よりは一層手広く商売した馬喰町の扇面亭というが専ら書画会の世話人をした。同じ町内の交誼で椿岳は扇面亭の主人とはいたって心易く交際っていて、こういう便宜があったにもかかわらず、かつて一度も書画会を開いた事がなかった。
尤も椿岳は富有の商家の旦那であって、画師の名を売る必要はなかったのだ。が、その頃に限らず富が足る時は名を欲するのが古今の金持の通有心理で、売名のためには随分馬鹿げた真似をする。殊に江戸文化の爛熟した幕末の富有の町家は大抵文雅風流を衒って下手な発句の一つも捻くり拙い画の一枚も描けば直ぐ得意になって本職を気取るものもあった。その中で左に右く画家として門戸を張るだけの技倆がありながら画名を売るを欲しないで、終に一回の書画会をだも開かなかったというは市井町人の似而非風流の売名を屑しとしない椿岳の見識であろう。富有な旦那の冥利として他人の書画会のためには千円からの金を棄てても自分は乞丐画師の仲間となるのを甘じなかったのであろう。