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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
というのは、彼は元来ちびだったのである。体質なのか、食物のためなのか、或いは根性が強過ぎるためなのか、里子時代から、どうも彼の身長は思わしくのびなかった。学校に通い出してからは、肉付や血色はめきめきとよくなっていったが、身長だけは、同年輩のどの子供よりも低くて、体操ではいつもびりにならばされた。
恭一を真ん中にして兄弟三人が並ぶと、まるで聖徳太子の画像を見るようだと、みんなが笑ったものだが、実際今では、次郎の身長は俊三と三分とちがっていないのである。
むろん二人の着物は、同じ長さに裁たれた。しかも大ていは同じ柄の飛白であった。だから、二人は着物を取りちがえては、よく喧嘩をした。もっとも、喧嘩をしても、母や祖母は少しも困らなかった。というのは、汚れや綻びの多い方を次郎のだときめてしまえば、それで簡単に片がついたからである。
むろん、この決定には、しばしば誤りがあった。しかし、誤りがあっても、そう決めて置く方が簡単であり、次郎の戒めにもなると、二人は考えていたのである。
着物の方は何とか諦めがつくとしても、毎日学校の往き帰りに、俊三と並んで歩かねばならないことは、次郎にとって、何としても我慢の出来ないことであった。