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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

彼はかなりうろたえた。しかし、誰にもお浜のことをたずねてみようとはしなかった。人に秘密にしていたものを失くした時のように、一人でそわそわと、家じゅうを歩きまわっていた。みんなは、彼のそうした様子を見ながら、わざとのように口をきかなかった。

朝飯をすますと、彼はすぐ戸外に飛び出して、仲間を集めた。そして、いつものように戦争ごっこを始めたが、何となく気乗りがしなかった。「進め」の号令をかけて、仲間を前進さしておきながら、自分だけは、ぽかんと道の真ん中に突っ立っていたりした。

「面白くないなあ。」

とうとう仲間の一人が不平を言い出した。

「学校に行ってみようや。」

他の一人が提議した。みんながすぐそれに、賛成した。

「前へ進め!」

次郎はすぐ、彼らを二列縦隊に並べて、号令をかけた。彼はみんなの先顔に立って、今度は非常に元気よく歩き出した。

むろん、他の子供たちは新校舎の方に行くつもりでいた。ところが、次郎は、別れ道のところまでくると、道を左にとって、旧校舎の方に行こうとした。

「どこへ行くんだい?」

「こっちだい。」

みんなは列をくずして、がやがや言い出した。