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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

彼は、間もなく、自分の思いつきを後悔した。そんて、仲間が石投げに夢中になっている間に、一人でこっそり校番室に這入りこんで、昨日お浜が腰をおろしていたあたりに、悄然と腰をおろした。

小石はおりおり、校番室の隣の部屋にもがらがらと音を立てて、ころげて来た。そのたびに、彼は胸の底を何かで突っつかれるような痛みを感じた。

(この部屋だけは荒らさせたくない。)

彼は、急に、仲間のすべてを敵にまわして、自分一人で校番室を守ってでもいるような、悲壮な気分になった。

「わあっ!」

突撃がはじまったらしく、廊下を狂暴に走りまわる音がきこえた。しかし、間もなく誰かが叫んだ。

「おい! 次郎ちゃんがいないぞ。」

「ほんとだ。どうしたんだろう。」

「戦死したんか。」

「馬鹿いえ。」

「弾丸を取りに行ったんだろう。」

「そうかも知れん。」

「おうい、次郎ちゃん!」

「じーろーちゃん!」

みんなが声をそろえて叫んだ。次郎は、しかし、彼らに答える代りに、そっと床下にもぐりこんで、息を殺した。

かなり永い間、次郎の捜索が続けられた。最後に、みんながどやどやと校番室に這入って来た。

「いないや。」

「馬鹿にしてらあ。