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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

」

と、竜一が飴玉を口の中でころがしながら答えた。次郎は默っていた。

「でも、さっきから少し変なのよ。」

「どうして?」

「竹ちゃんや、鉄ちゃんが、何度も裏口から覗いて、次郎ちゃんはまだいるかってきくの。何でも、由ちゃんが次郎ちゃんの帰りを待ってて、いじめるんだってさ。」

「由ちゃんなんか、何だい。僕、あべこべにいじめてやるよ。」

次郎は急に立ち上った。飴玉は、まだ彼の口の中で半分ほども溶けていなかったが、彼はそれをがりがりと噛み砕いた。

「およしよ。由ちゃんはずるいから、お友達を何人もかたらっているらしいのよ。」

「卑怯だなあ。僕、負けるもんか。」

「そうだい。次郎ちゃんは強いんだい。僕、見に行ってやらあ。」

竜一までが立ち上った。

「およしったら、喧嘩なんかつまらないわ。……次郎ちゃん、ゆっくりしておいで。竜ちゃんと一緒に、夕飯をご馳走してあげるわ。」

次郎はまだこの家で飯を招ばれたことがなかった。子供にとって他人の家の食卓というものは、大きな魅力をもっているものだが、とりわけ次郎にとっては、そうであった。彼のいきり立った気分が、春子にそう言われて、急に柔らぎかけた。