轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

ある日など、大川の土堤の斜面にねころんで、赤い蟹が芦の茎を上ったり下ったりするのを、一時間あまりも一人で眺めていて、自分でも不思議に思ったことがある。しかし、あとで考えると、そんな時には、大てい、校番室を思い出し、お浜や、弥作爺さんや、お鶴や、お兼や、勘作や、それからそれへと、正木の家に来るまでのことを、一巡思い起していたことに気づくのである。

彼は、以前の悪癖がなおらないで、このごろでもしばしば生きものを殺した。しかし、殺したあとでは、いつも変に気味わるい感じになるのであった。そんな時に、彼がよく思い出すのは村はずれの団栗林だった。そこには小さな祠が祭られていたが、その祠の真うしろの、一番大きい団栗の幹に、大釘が五本ほど打ちこんであるのを、かつて彼は見たことがあった。村の人達の話では、誰かが人を呪って、その両眼と両耳と口とを利かなくしようとしたものだ、ということだった。なるほど、そう聞くと、釘の位置が、ちょうどそんなふうになっていた。次郎には、運命というようなものを考える力はなかったが、思わぬ敵や、災いが、どこにひそんでいるかわからぬ、といったような感じが、そんなことから、いつとはなしに、彼の胸に芽生えはじめていたのである。