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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

01 第一部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页

青空文庫

」

お民は冷やかにそう言って、また庭に下りた。

そして、つかつかと次郎の前まで歩いて来ると、いきなりその両肩をつかんで、縁台に引きすえた。

「お前は、お前は、……こないだもあれほど言って聞かしておいたのに。……」

お民は息を途切らしながら言った。

次郎は、母に詰問されたら、父もそばにいることだし、素直に白状してしまおうと思っていたところだった。しかし、こう始めから決めてかかられると、妙に反抗したくなった。彼は眼を据えてまともに母を見返した。

「まあ、この子は。……貴方、この押しづよい顔をご覧なさい。これでも貴方は放っといていいとおっしゃるんですか。」

お民の唇はわなわなとふるえていた。

俊亮は、困った顔をして、しばらく二人を見較べていたが、

「お民、お前の気持はよくわかる。だが今夜は俺に任しとけ。……次郎、さあ寝る前に、もう一度行水だ。父さんについて来い。」

そう言って彼は次郎の手を掴むと、引きずるようにして、庭からすぐ湯殿の方へ行った。

湯殿に這入ってから、俊亮はごしごし次郎の体をこするだけで、まるで口を利かなかった。次郎は、すると、妙に悲しみがこみ上げて来た。