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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
蛙を見つけては、遁がさず踏み潰した。蛇が蛙を呑むのを、舌なめずって最後まで見まもり、呑んでしまったところをすぐその場で叩き殺した。隣の猫をとらえて、盥をかぶせ、その上に煉瓦を三つ四つ積みあげて、一晩じゅう忘れていた。
尤も、人間に対してだけは、彼は、それほどあからさまに残忍性を発揮することが出来なかった。というのは俊三以外の人間で、彼の手籠になる人間は一人もいなかったし、俊三にしても、うっかり手を出すと、すぐに母に言いつけられるにきまっていたからである。
ところで、兄の恭一に対してだけは、どうしてもじっとしておれない事情があった。
恭一は九月になるとすぐ学校に通い出した。彼はもう二年生だったのである。このことは次郎に抑え切れない嫉妬心を起こさした。
(恭一は、毎日お浜に逢って、頭を撫でて貰ったり、やさしい言葉をかけて貰ったりしているのだ。)
そう思うと、次郎の頭はかっとなる。何とかして、恭一が学校に行くのを邪魔してみたいものだと思う。
ある晩、とうとう彼は一計を案じ出した。
翌朝起きるとすぐ、彼は、恭一の学用品を入れた雑嚢を抱えて、こっそり便所に行った。