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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
今まで茶の間に坐ったまま、默ってみんなの言うことを聞いていた正木のお祖父さんは、
「ともかくも、直吉は一応帰って見るがいい。こちらはこちらで、心あたりを捜して置くからな。だが、見つかっても、見つからんでも、日暮までにはおたがいに知らせあうことにして置かんと困る。――お浜は、よかったらもう一晩泊ったらどうかの。」
お浜はちょっと思案していたが、
「私もすぐ帰らしていただきましょう。すこし思い当ることもありますから。」
「まさかお前のところに逃げて行ったんではあるまい。」
「私もまさかとは思いますが……」
そう言いながら、お浜は直吉と一緒に、そそくさと暇を告げた。
その後、捜索は三方で行われたが、どちらからもいい報告はなかった。日が暮れると間もなく、お浜が再び正木の家にやって来た。本田からは、九時頃になって、俊亮と、お民と、お祖母さんとが、揃ってやって来た。お民は這入って来るとすぐ、白い眼をして、じろりとお浜を見た。お祖母さんは、
「あんな小さい子を一人で使いに出したりするものですから、とうとうこんな事になりまして。……第一こちら様に相済まないことだし、それに世間様にも恥ずかしい。