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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

七

「魏の大軍が、雲霞のように見えた。あれよ、麓から三道に潮のごとく見えるものすべて魏の兵、魏の旗だ。……」

城兵はうろたえるというよりは、むしろ呆れて、人心地もなく、顔の血も去喪してただふるえていた。

「ああ、寄せも寄せたり。揃えも揃えたり。なんと、おびただしくも物々しい魏の軍立てよ」

孔明は、櫓に立って、敵ながら見事と、寄手の潮を眺めていた。

七

この小城、この寡兵。

いかに防げばとて、戦えばとて、眼にあまる魏の大軍に対しては、海嘯の前の土塀ほどな支えもおぼつかない。

孔明は櫓の高楼から身を臨ませて、喪心狼狽、墓場の風のごとく去喪している城兵に向って、こう凛と、命を下した。

「四門を開けよ。開け放て。――門々には、水を打ち、篝を明々と焚き、貴人を迎えるごとく清掃せよ」

そしてまた、いちだん声たかく、

「みだりに立騒ぐ者は斬らん。整々粛々、旗をそろえよ。部署部署、旗の下をうごくなかれ。静かなること林のごとくあれ。――門ごとの守りの兵は、わけて長閑に団欒して、敵近づくも居眠るがごとくしてあれ」

命を終ると、彼は、日頃いただいている綸巾を華陽巾にあらため、また衣も新しき鶴に着かえて、