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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

松に古今の色無し

一

松に古今の色無し

一

旌旗色なく、人馬声なく、蜀山の羊腸たる道を哀々と行くものは、五丈原頭のうらみを霊車に駕して、空しく成都へ帰る蜀軍の列だった。

「ゆくてに煙が望まれる。……この山中に不審なことだ。誰か見てこい」

楊儀、姜維の両将は、物見を放って、しばらく行軍を見合わせていた。道はすでに有名な桟道の嶮岨に近づいていたのである。

一報。二報。偵察隊は次々に帰ってきた。

すなわち云う。この先の桟道を焼き払って、道を阻めている一軍がある。それは魏延にちがいないと。

「さてこそ」

姜維は扼腕したが、楊儀は文吏である。どうしようと色を失った。

「心配はない。日数はかかるが、槎山の間道を辿れば、桟道によらず、南谷のうしろへ出られる」

嶮岨、隘路を迂回して、全軍は辛くも南谷をふさいでいる魏延軍のうしろへ出た。

途上から、楊儀はこの顛末を、成都へ報じた。ところが、その前に、魏延からも、上表がとどいていた。

(楊儀、姜維の徒が、丞相薨ぜられるや、たちまち、兵権を横奪して、乱を企てておるので、自分は彼らを討つ所存である)

というのが魏延からの上奏文であり、後から届いた楊儀の上表には、それとはまったく反対な実状が訴えられてきた。