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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁
四
しかし、天まだ明けず、その行く先には、またまた、一面の火が長蛇の如く彼方の闇に横たわっていた。
四
「何者の陣か、見て来い」
と、孔明に命ぜられて、先へ駈けて行った関興は、やがて立ち帰ってくると、
「あれこそ、姜維の勢です」と、告げた。
遠くその火光の布陣を望んでいた孔明は、嗟嘆してやまなかった。
「さてこそ、凡の軍立てとは異なると思うていた。――おびただしき大軍のように見えるが、事実はさしたる兵数ではあるまい。ただ大将の軍配一つによってあのようにも見えるものだ」
左右へ語っているうちに、早くも火光は環を詰めて近づき、後ろからも、ばらばらと箭が飛んできた。
「戦うな。わが備えはすでに破れた。ただ兵の損傷を極力少なくとどめて退却せよ」
孔明もひたすら逃げて、ようやく敵の包囲から脱した。
遠く陣を退いて、さて、味方の損害を糺してみると、予想外な傷手を蒙っていたことが分った。
戦えば必ず勝つ孔明も、ここに初めて、敗戦を知った。一方的勝利のみを克ち獲ていたのでは、真の戦争観もそれに奮う力も生じてこない。
孔明は、われ自身を侮蔑するが如く、唇をかんで呟いた。
「――思うに、一人の姜維にすら勝つことができない人間に、何で魏を破ることができようぞ」