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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁
三
むかし季布という口舌の雄が、漢の高祖を陣頭で論破し、ついにその兵を破り去った例がある。――王朗の狙っているのはまさにその効果だ。はやく孔明が何とか論駁してくれればよいが――とひそかに焦躁していると、やがて孔明は、おもむろに口を開いて、
「申されたり王朗。足下の弁やまことによし。しかしその論旨は自己撞着と偽瞞に過ぎず、聞くにたえない詭弁である。さらばまず説いて教えん」と、声すずしく云い返した。
「汝はもと漢朝の旧臣、魏に寄食して、老朽の脂肉を養うとも、心のそこには、なおいささかの良心でもあろうかと、はじめは敬老の念を以て対したが、はからざりき、心身すでに腐れ果て、今のごとき大逆の言を平気で吐こうとは。――あわれむべし。壮年の英才も、魏に飼われて遂にこの駄馬となり果てたか、ひとり汝にいうは張り合いもない。両国の軍勢も、しばししずかにわが言を聴け」
三
理は明晰に、声は朗々、しかも何らの奇矯なく、激するなく、孔明は論じつづけた。
「かえりみるに、むかし桓帝、霊帝はご微弱におわせられ、為に、漢統ようやく紊れ、奸臣はびこり、田野年々凶をかさね、ここに諸州騒乱して、ついに乱世の相を現わした。