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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

四

思うに、孔明はまったく、その体が二つも三つも欲しかったろう。或いは、その天寿を、もう十年とも、思ったであろうと察しられる。

やはり彼の真の知己は、無名の民衆にあったといえよう。今日、中国各地にのこっている――駐馬塘とか、万里橋とか、武侯坡とか、楽山とか称んでいる地名の所はみな、彼が詩を吟じた遺跡だとか、馬をつないだ堤だとか、人と相別れた道だとかいう語り伝えのあるところである。そういう純朴な思慕の中にこそ、むしろ彼の姿はありのままに、また悠久に、春秋の時をも超えて残されていると思う。

四

――しかし、ただ困るのは、民間の余りな彼への景仰は、時には度がすぎて、孔明のすべてを、ことごとく神仙視してしまうことである。

その二、三の例をあげると。

――孔明の女は雲に乗って天に上った。それが葛女祠として祭られたものだ。「朝真観記記事」

――木牛流馬は入神の自動器械で、人の力を用いず自でに走った。「戎州志」

――彼は時計も作った。その時計は、毎更に鼓を鳴らし、三更になると、鶏の声を三唱する。「華夷考」

――孔明の用いた釜は今でも水を入れるとひとりでにすぐ沸く。