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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁
二
それは孔明が臨終の折、自分に授けて、後日、魏延に変あるとき見よ、と遺言して逝った――あの錦の嚢であった。
二
嚢の中には一書が納められてあった。孔明の遺筆たるはいうまでもない。封の表には、
――魏延、叛を現わし、その逆を伐つ日まではこれを開いて秘力を散ずるなかれ。
と、したためてある。
楊儀と姜維は嚢中の遺計が教える所に従って、急に作戦を変更した。すなわち閉じたる城門を開け放ち、姜維は銀鎧金鞍という武者振りに、丹槍の長きを横にかかえ、手兵二千に、鼕々と陣歌を揚げさせて、城外へ出た。
魏延は、はるかにそれを見、同じく雷鼓して陣形を詰めよせて来た。やがて漆黒の馬上に、朱鎧緑帯し、手に龍牙刀をひっさげて、躍り出たる者こそ魏延だった。
味方であった間は、さまでとも思えなかったが、こうして敵に廻してみると、何さま魁偉な猛勇に違いない。姜維も並ならぬ大敵と知って、心中に孔明の霊を念じながら叫んだ。
「丞相の身も未だ冷えぬうちに、乱を謀むほどな悪党は蜀にはいない筈だ。日頃を悔いて自ら首を、霊車に供え奉りに来たか」
「笑わすな、姜維」
魏延は、唾して軽くあしらった。
「まず、楊儀を出せ、楊儀からさきに片づけて、然る後、貴様の考え次第ではまた対手にもなってやろう」