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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁
彼の死は、蜀軍をして、空しく故山に帰らしめ、また以後の蜀の国策も、一転機するのほかなきに至ったが、個人的にも、ずいぶん彼の死の影響は大きかったらしい。
蜀の長水校尉をしていた廖立という者は、前から自己の才名を恃んで、
(孔明がおれをよく用いないなんていうのは、人を使う眼のないものだ)
などと同僚にも放言していたくらいな男だが、その覇気と自負が過ぎるので、孔明は一時彼の官職を取り上げ、山という僻地へ追って謹慎を命じておいた。
この廖立は、孔明の死を聞くと自己の前途を見失ったように嘆いて、
――吾終ニ袵ヲ左ニセン
といったということである。
またさきに梓潼郡に流されていた前軍需相の李厳も、
「孔明が生きてあらん程には、いつか自分も召し還されることがあろうと楽しんでいたが、あの人が亡くなられては、自分が余命を保っている意味もない」
といって、その後ほどなく、病を得て死んだといわれている。
とにかく、彼の死後は、しばらくの間、天地も寥々の感があった。ことに、蜀軍の上には、天愁い地悲しみ、日の色も光がなかった。
姜維、楊儀たちは、遺命に従ってふかく喪を秘し、やがて一営一営静かに退軍の支度をしていた。