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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

万政はうろたえたあまり、馬もろとも、谷間へ落ちた。

「そこまで、命をとりにゆくのは面倒だ。陣へもどったら郭淮にいえ。またいつかきっと会うぞと」

趙雲はついに味方の一兵も損せず、しずかに漢中へひきあげた。

その後――

司馬懿仲達は、蜀軍すべて、旗を捲いて、漢中へ逃げ籠ったのを見とどけてから、やがて西城へ軍を移して、なおその地に残っていた百姓たちを呼びあつめ、

「敵を慕って、漢中へ逃散した百姓どもは魏の仁徳を知らないのだ。おまえたちは先祖からの地をうごいてはならぬ」と、訓誡を与え、その後で孔明の施政ぶりや、また孔明がこの城にいたときの容子をいろいろ訊ねた。

ひとりの老百姓がいった。

「都督様が大軍をひきいてこの西城をお攻めになろうとした時、孔明の下には、弱そうな蜀兵が、わずか二千ほどしかおりませんでした。どうして急にあのときお引揚げになってしまわれたのでしょう。てまえどもはふしぎに存じておりました」

初めて、孔明の計と知った司馬懿は、その時には、何の顔いろも見せなかったが、後、独り天を仰いで長嘆し、

「我勝てり。併しついに、我孔明に及ばずであった」

と、喞った。