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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁
「その私情こそ尤なる罪であって、馬謖の犯した罪はむしろそれより軽い。けれど、惜しむべきほどな者なればこそ、なお断じて斬らなければならぬ。……まだ斬らんのか。何をしておる。早く、首をみせよ」
孔明は、侍臣を走らして、さらに催促させた。――と、間もなく、変り果てた馬謖のすがたが、首となってそこへ供えられた。ひと目見ると、孔明は、
「ゆるせ、罪は、予の不明にあるものを」
と、面を袖におおうて、床に哭き伏した。
とき蜀の建興六年夏五月。若き馬謖はまだ三十九であったという。
首はただちに、陣々に梟示され、また、軍律の一文が掲げられた。
その後、糸をもって、胴に縫いつけ、棺にそなえて、あつく葬られた。かつ、その遺族は、長く孔明の保護によって、不自由なき生活を約されたが、孔明の心は、決して、慰められなかった。
――罪、我にあり。
孔明の自責は、みずから刃を身に加えたいほどだった。しかし蜀の危急はさし迫っている。なおかつ先帝の遺託もある。彼は身の重責を思うと死ぬにも死ねない思いを新たに持つ。そして遂に、こういう形をとるほかなかった。
成都へ帰る蒋に託して、彼は一文を表して、蜀帝に奏した。