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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

苟安に買収された徒が浅慮にも私利私慾に乗ぜられて、思うつぼへ落ちたものであった。

この結果はやがて、蜀帝の勅使派遣となって具体化して来た。要するに帝の後主劉禅もまたついにうごかされたのである。すなわち、節を持たせて、前線に勅命を伝え、

――朕、大機の密あり、直々、丞相に問わん、即時、成都に還れ。

と、召喚を発したのであった。

命に接するや孔明は天を仰いで大いに哭き、落涙長嘆してやまなかったという。

「主上はまだ御年もいとけなくおわすがゆえ、おそらくは佞官のみだりなる言に惑わされたものであろう。いま戦況は我に有利に展開し、ようやく長安を臨む日も近からんとするときにこの事あるは、そも天意か、はた蜀の国運の未だ開けざる約束事か。――さりとて、もし勅にそむけば、佞人の輩はいよいよ我説を虚大に伝え、この身また君を欺く不忠の臣とならざるを得ない。しかも今ここを捨ててかえるときは、再びまた祁山へ出ることは難かろう。そのひまに魏の国防はいよいよ強化され、長安、洛陽はついに不落のものとなるはいうまでもない」

かく悶々たる痛涙はながしたが、大命ぜひなく、孔明は即日、大軍を引き払った。