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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

のがすな」と、魏の鉄騎隊は鞭打った。

ところが、不思議や、追えども追えども追いつかない。

妖しき霧が吹き起って、白濛々黒迷々、彼方の車は目の前にありながら、馬は口に泡を噛み、身は汗に濡るるばかりで、少しも距離は短縮されないのであった。

「奇怪奇怪。おれたちはもう三十余里も馬を飛ばして来ているのに?」

「孔明の車はあのように急ぎもせず徐々と行くのに?」

「これで追いつけないとはどういうわけだろう」

呆れ返って、魏の勢はみな馬をとどめ、茫然、怪しみに打たれていた。

すると孔明の車とその一陣はまた此方へ向って進んでくる。魏兵はそれを望むと、

「おのれ、こんどこそは」

喚いて攻めかかったが、こっちで奔ると、彼方の影は再び後ろを見せている。しかも悠々とさわがず乱れず逃げてゆく。

またも追うこと二十余里。鉄騎二千はみな息をきらしたが、孔明の車との隔りは、依然すこしも変っていない。

「これはいよいよ凡事ではない」

迷いにとらわれて、一つ所に人馬の旋風を巻いていた。そこへ後ろから馬を飛ばしてきた仲達が、口々にいう嘆を聞いて、さてはと悟り顔に、

「察するにこれは、孔明のよくなす八門遁甲の一法、六甲天書のうちにいう縮地の法を用いたものであろう。