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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

と左右の武士へ命じた。

「あっ。な、なんで。――それがしを?」

と、鄭文は首を抱えて絶叫した。孔明は、笑った。

「この屍は、秦朗ではない。秦朗は予も前から見知っている。似ても似つかぬ下郎をもって秦朗なりと欺いても、その計には乗らん。思うに、仲達が申しつけた偽計にちがいあるまい」

鄭文は震いおそれて、その通りですと自白した。孔明は思案していた。そして何か思い直したように、

「鄭文を檻車に入れておけ」と、しばらく斬るのを見合わせた。

翌日。孔明は自分の書いた原文を示して、

「命が惜しくば、司馬懿へ宛ててこの通りの書簡を書け」と、鄭文へ筆紙を持たせた。

鄭文は檻の中でその通りの書簡を書いた。これを持った蜀の一兵は附近の住民に姿を変えて、魏の陣へまぎれ入った。そして、

「鄭文という人から頼まれて来た者ですが」

と、司馬懿の側臣に手渡した。

司馬懿仲達は、書簡を熟視した。筆蹟は鄭文にまぎれない。彼はいたく歓んだ様子で、使いの男に酒食を与え、誰にも洩らすなと口止めして帰した。

二

鄭文の書簡には、

――明夜、祁山の火を合図に、都督みずから大軍をひきいて攻め懸り給え。孔明不覚にもそれがしの降伏を深く信じて、この身彼の中軍にあり。