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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

もっている。

しかしこの曹操の全盛期を分水嶺として、ひとたび紙中に孔明の姿が現われると、彼の存在もたちまちにして、その主役的王座を、ふいに襄陽郊外から出て来たこの布衣の一青年に譲らざるを得なくなっている。

ひと口にいえば、三国志は曹操に始まって孔明に終る二大英傑の成敗争奪の跡を叙したものというもさしつかえない。

この二人を文芸的に観るならば、曹操は詩人であり、孔明は文豪といえると思う。

痴や、愚や、狂に近い性格的欠点をも多分に持っている英雄として、人間的なおもしろさは、遥かに、孔明以上なものがある曹操も、後世久しく人の敬仰をうくることにおいては、到底、孔明に及ばない。

千余年の久しい時の流れは、必然、現実上の両者の勝敗ばかりでなく、その永久的生命の価値をもあきらかに、曹操の名を遥かに、孔明の下に置いてしまった。

時代の判定以上な判定はこの地上においてはない。

ところで、孔明という人格を、あらゆる角度から観ると、一体、どこに彼の真があるのか、あまり縹渺として、ちょっと捕捉できないものがある。

軍略家、武将としてみれば、実にそこに真の孔明がある気がするし、また、政治家として彼を考えると、むしろそのほうに彼の神髄はあるのではないかという気もする。