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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁
――後、董卓出でて、ひとたび治まるも、朝野の議をみだりに私なし、四寇の乱、ついで起り、あわれ漢帝を民間に流浪させ参らせ、生民を溝壑に追い苦しむ」
孔明はことばを休めた。
内に情を抑え、外に平静を保たんとするものの如く、そっと両の袖を払い直し、羽扇を膝に持ち直して、さらに語をついだ。
「――偲ぶも涙、口にするも畏れ多い。その頃の有様といえば、廟堂人あるも人なきに似、朽ち木を組んで宮殿となし、階陛すべて落ち葉を積み、禽獣と変りなき吏に衣冠させて禄を喰らわしめ、議廟もまた、狼心狗走のともがら、道を口に唱え、腹に利を運ぶための場所でしかなかった。――奴顔婢膝の徒、あらそって道にあたり、まつりごと私に摂る。――かくて見よ、世の末を。社稷をもって丘墟となし、万民の生霊を塗炭となして、それを傷む真の人はみな野にかくれ――王朗よ、耳の垢をのぞいて、よく聞かれい」
孔明は声を張った。
その声は雲雀のように、高く天にまで澄んで聞えた。
「滔々、濁世のとき、予は若き傷心を抱き、襄陽の郊外に屈居して、時あらん日を天に信じ、黙々、書を読み、田を耕しつつあったことは、さきに汝がいった通りにちがいない。