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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁
家にひそんで食をむさぼり老慾に耽りてあるなら助けもおくべきに、何とて、似あわしからぬ鎧甲を粧いて、みだりにこの陣前へはのさばり出たるか。それだけでも、あっぱれ天下の見世物なるに、この野に死屍をさらし、なんの面目あって、黄泉の下、漢皇二十四帝にまみえるつもりであるか。退れっ、老賊」
凛々たる終りの一喝は、矢のごとく、論敵の肺腑をつらぬいたかのように思われた。
結論的には、漢朝に代るべく立った蜀朝廷と魏朝廷とのいずれが正しいかになるが、要するに、その正統論だけでは、魏には魏の主張があり、蜀には蜀の論拠があって、これは水掛け論に終るしかない。
で、孔明はもっぱら理念の争いを避けて衆の情念を衝いたのである。果たして、彼がことばを結ぶと、蜀の三軍は、わあっと、大呼を揚げてその弁論を支持し、また自己の感情を、彼の言説の上に加えた。
それに反して、魏の陣は、唖のごとく滅入っていた。しかもまた、当の王朗は、孔明の痛烈なことばに、血激し、気塞がり、愧入るが如く、うつ向いていたと思われたが、そのうちに一声、うーむと呻くと、馬の上からまろび落ちて遂に、そのまま、息絶えてしまった。