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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁
……そのほかの将には、後刻なお告げるところがあろう」
すなわち姜維は誘導戦法の先手となって軍へ近づいたのである。――と見るや越吉元帥の中軍は、例の鉄車隊を猛牛の如く押しすすめ、姜維の勢を席巻せんとして来た。
姜維の勢は、引っ返し、また踏みとどまり、また逃げ奔る。
勝ち誇った族の大軍は、この日を期して、蜀軍を粉砕せよと、戦線を拡大して、ついに孔明の本陣まで突入して来た。
戦い半ばの頃から大きな牡丹雪が降り出して、朔風凛々、次第にこの地方特有な吹雪となりだしていたが、今しも姜維の兵は、その霏々たる雪片と異ならず、みな先を争って、陣門の内へ逃げ入り、防ぎ戦う者もなかった。
鉄の猛牛は苦もなく柵門を突き破り、十台、二十台、三十台と、列をなして進み入った。それに続いて、騎馬二千、歩兵三、四千も喊声をあげてなだれ入った。
ところが、兵営の彼方此方に、凍れる旗とおびただしい雪の吹きだまりが眺められただけで、陣内には、一兵も見えない。――のみならず、その雪風か、枯葉の声か、非ず、不思議な美音が、何処からともなく聞えてくるではないか。
「はてな? ……。待て待て。深入りするな」