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さんごくし

三国志(八)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁

青空文庫

「うーむ。何もふさいでやせんがな」

仲達は、節の太い指を櫛にして、そのまばらな長髯をしごいた。

兄の司馬師が父の晴れない眉をうかがって云った。

「私には分っている。お父上のお胸にはいま鬱勃たるものがわいているのだ」

「うるさいよ。お前たちに何がわかるもんではない」

「いいえ、きっとそうです。思うに、お父上は、天子からお招きがないのを嘆いておられるのでしょう」

「なんじゃ?」

すると、弟の司馬昭も、

「それならば、くよくよする事はありませんよ。きっと来る。近いうちにきっとお召しが来る」

と、大きな声で断言した。

司馬懿は、刮目して、

「おおっ、わしの家からまたも、この麒麟児が生れ出たか」

とわが子ながら見惚れて云った。

それから幾日も経たないうちである。果たして、勅使が、この門を訪れた。

もちろん司馬懿は、大命を拝受し、同時に一族、郎党を集めて、直ちに、檄を宛城諸道へ配布した。

日頃、彼の名をしたい、彼の風を望む者少なくない。郷関はたちまち軍馬でうずまる。しかも仲達は、その兵員が予定数に達することなどを悠々待ってはいなかった。

その日から行軍を開始していたのである。