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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(八)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,604 字 · 391 頁
「量るに、街亭一つ守り得ないくらいなら、将来、武門に伍して、何の用に足りましょう。どうか自分を派遣して下さい」
と、多少日頃の親しみにも甘え、ほとんど縋らんばかり熱望をくりかえした。
馬謖は孔明を父とも慕い師とも敬っていた。孔明もまた慈父のごとく彼の成長を多年ながめてきたものである。
もともと馬謖は、夷族の役に戦死した馬良の幼弟だった。馬良と孔明とは、刎頸の交わりがあったので、その遺族はみな引き取って懇ろに世話していたが、とりわけ馬謖の才器を彼はいたく鍾愛していた。
故玄徳は、かつて孔明に、
(この子、才器に過ぐ、重機に用うるなかれ)といったが、孔明の愛は、いつかその言葉すら忘れていた程だった。そして長ずるや馬謖の才能はいよいよ若々しき煥発を示し、軍計、兵略、解せざるはなく、孔明門第一の俊才たることは自他ともにゆるす程になってきたので、やがての大成を心ひそかに楽しみと見ているような孔明の気持だったのである。
――で今。
その馬謖からせがまれるような懇望を聞くと、彼は丞相たる心の一面では、まだちと若いとも思い、まだ重任過ぎるとも考えられたのであるが、苦しい戦と強敵にめぐり合わせるのもまた、この将来ある人材の鍛錬であり大成への段階であろうとも思い直し、その機微な心理のあいだに、自己の小愛がふとうごいていたこと