Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
大山の皺に棲むものは、鳥獣ばかりとは限らない。彼女が駈け歩いた峰や沢や山畑の遠方此方から、忽ちにして、簇り集まって来た人間は、二十名以上もある。
しかもその行動には、訓練があった。地を掃いて来る木の葉よりも静かに、藤次の小屋の前に集まると、
「ひとりか?」
「武士か」
「金は持ってるのか」
などと密々囁き交わし、指真似や、眼くばせで、各※(二の字点、1-2-22)、いつも通りの部署につくべく分れて行く。
猪突き槍や、鉄砲や、大刀を持って、その一部は、寝小屋の外を窺い、また、半分は小屋のわきから絶壁を下りて、確か、谷底へ廻ったらしい。
なお、その中から、べつに二、三人の賊は、崖の中途を這って、ちょうど武蔵の眠っている小屋の下へ辿りついた。
準備は出来たのである。
谷間へ懸出してあるこの小屋は、つまり彼らの罠なのである。その小屋は、莚を敷き、たくさんな薬草の乾草を積み、薬研や製薬の道具などわざと置いてあるが、それはここへ入れる人間の安眠剤であって、元より彼らの職業は、薬刻みや、薬草を乾すことではない。
武蔵も、そこへ横になると、快い薬草のにおいに、眠りを誘われて、手足の先にまで、腫れぼったい疲れが出て来たが、山で生れ、山で育った武蔵には、この谷間の懸出し小屋に、一応、頷けないものがあった。