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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
二
「はい」
「わしが下から、炭俵を外へ抛ってやるから、その炭俵を見て、なにも変ったことがなかったら跳ぶがよい」
と城太郎の体を、肩ぐるまに乗せて立った。
二
「届くか、城太郎」
「まだ、まだ」
「では、わしの両方の肩に足をのせて、立ってみろ」
「でも、草履だから」
「かまわぬ、土足のままでよい」
肩車の上の城太郎は、脚をかわして、いわれた通り、武蔵の肩のうえに両足をのせて立った。
「こんどは、届いたであろう」
「まだです」
「やッかいな奴だの。身を弾ませて、柵の横木まで跳びつけぬか」
「できないや」
「仕方がない、それでは、わしの両掌に足をのせろ」
「だいじょうぶ?」
「五人や十人乗っても大事はない。さ、よいか」
城太郎の足の裏に、自分の両掌を踏ませて、武蔵は、鼎を差し上げるように、ぐっと自分の頭上より高く彼の体を上げた。
「――ア、届いた、届いた」
城太郎は、柵の上に取り付いた。武蔵は、先刻の炭俵を片手に持ち、外の闇へぽうんと抛った。
炭俵は、どさっと、蘆の中へ落ちた。――なんの異状もないと見えて、その後から城太郎が跳び降りた。
「なんだ、水たまりも、なにもありやしない。お師匠様、ここは、ただの原ッぱだぜ」