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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
六
「お通さん、武蔵様だよ、武蔵様だよ。……分る? 分る?」
と、ともどもいたわりを籠めていう。
お通は喉へ水を落すと、幾分か胸がらくになったように、ほっと気のついたように息をついた。しかし、体は武蔵の手に凭れたままうっとりと眸はまだ遠くを見ていた。
「おいらじゃないんだぜ、お通さん、お通さんを抱いているのは、お師匠さまなんだよ」
城太郎がそう繰返すと、お通は遠くを見ている眸に、湯のような涙をいっぱいにたぎらせ、見るまに、その眼は、ぎやまん玉の曇りにも似て、やがて頬を下るふたすじの白珠とはふりこぼれると、
(……分っています)
と、いうように頷いた。
「ああ、よかった」
城太郎は無性に欣しくなってしまい、わけもなく満足して、
「お通さん、これでいいだろ。もう、これで気がすんだろう。……お師匠様、お通さんね、あれから、どうしても、もいちど武蔵様に会うんだといって、病人のくせに、いうこと肯かないんだよ。こんなこと度々やると死んじまうにきまっているから、お師匠様からよくそういっておくれよ、おいらのいうことなんか肯かないんだもの」
「そうか」
武蔵は、彼女を抱えたまま、