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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
五
武蔵は冷やかにもういちど、
「わかりました。否やもござらぬゆえ、明朝は、必ず立ち退きまする」
答え放して、門内へはいろうとすると、その背へ、唾するようにべつの法師たちが口々に罵った。
「見よ! 外道」
「羅刹め」
「馬鹿ッ」
五
「なんじゃと」
憤っとしたに違いない、武蔵は足を止め、そして自分に嘲罵をあびせた堂衆をねめつけた。
「聞えたか」
こういったのは今、武蔵のうしろから、外道と呶鳴った法師だった。武蔵は心外そうに、
「役寮の命とあるゆえ、神妙に仰せごとを受け申しておるに、口ぎたない罵詈は心得申さぬ。わざとそれがしに喧嘩でも売ろうと召さるか」
「み仏に仕えるわれわれ、喧嘩など売る気はみじんもないが、おのずから喉を破って、今のような言葉が出てしもうたのだから仕方がない」
すると、他の法師も、
「天の声だ」
「人をもっていわしめたのだ」
加勢するように、喚きかかった。
蔑みの眼と――嘲罵の唾とが、武蔵の身にあつまった。武蔵は、耐えられない恥辱を感じた。しかし、いかにも自分に挑むような彼らの態度に、固く自分を、警戒して黙っていた。
この山の法師といえば、舌長いことでは古来から有名である。