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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens

Aozora Bunko

六

自分の生れた美作の山々にも、薬草採りの小屋はあるが、薬草はすべて湿気を忌う。こんな、鬱蒼と雑木の枝をかぶって、しかも滝しぶきの来るような所に、乾小屋は持っていない。

枕元には、薬研台の上に、錆びた鉄の灯皿がおいてある。その微かな燈心の揺らぎで見返しても――また合点のゆかないふしがある。

それは、四隅の材木と材木との継ぎ目である。鎹付けになっているが、その鎹の穴がやたらに見える。そして継ぎ目と、木の肌の新しい所とが一、二寸ずつ喰い違っている。

「ははあ」

彼の寝顔は、苦笑をうかべた。しかしまだ彼は木枕に顔をつけていた。――

しとしとと霧の音につつまれるように、ふしぎな気配をうつつに感じながら。

六

「……武蔵さん。……寝たんですか。もうお寝みかえ」

障子の外へ、そっと摺り寄っていうお甲の小声であった。

寝息を聞きすますと、すうと其処をあけて、お甲は、武蔵の枕元まで忍び寄り、

「ここへ、お水を置きますからね」

わざと、寝顔へ断りながら、盆をおいて、また静かに、障子の外へもどって行った。

母屋を闇にして、待っていた祇園藤次が、

「いいか」

囁くと、お甲は眼に手つだわせて、