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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
「…………」
「はっきりいえ」
「おじさんは……」
「うむ」
「でも」
「焦れったい奴。男というものは、もっと何でもはっきり物をいうものだ」
「……だってね……おじさんの商売は、泥棒だろ」
もし大蔵の手が、軽くでもかかっていなければ、途端に彼は、雲をかすみと駈け出していたに違いないが、その膝が深い淵のように、起つこともできなかった。
「あはははは」
大蔵は、泣きじゃくる背を、ぽんとたたいて、
「だから、おれの子になるのは、嫌だっていうのか」
「……う、うん」
城太郎がうなずくと、彼はまた、肩をゆすって笑いながら、
「おれは、天下を盗む者かもしれないが、けちな追剥や空巣ねらいたあ違う。家康も秀吉も信長も、みな天下を奪った人間じゃないか。――おれに従いて長い目で見ていると、今にわかって来る」
「じゃあおじさんは、泥棒でもないの」
「そんな割の合わない商売はしない。――おれはもっと太い人間さ」
もう城太郎の思案では、どう答えていいか、背が足りなかった。
大蔵は、膝の上から、ぽんと彼を離して、
「さあ、泣かずに歩け。きょうからはわしの子だ。可愛がってやる代りに、にも、ゆうべのことをひとに喋舌るな。