Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
と、杭の文字を見ていた。
「おやじ橋っていうんでさ」
「それはここに書いてあるが、どういうわけで」
「庄司甚内ってえおやじがこの町を開いたからでしょう。廓で流行っている小唄に、こんなのがありますぜ」
菰の十郎は、廓の灯に浮かされて、低い声で唄い出した。
おやじが前の竹れんじ
その一節のなつかしや
おやじが前の竹れんじ
せめて一夜と契らばや
おやじが前の竹れんじ
いく世も千代も契るもの
ちぎるもの……
仇にな引くな
切れぬ袂を
「先生にも、貸しましょうか」
「何を」
「こいつで、こう顔を隠してあるきます」
と、稚児と菰のふたりは、茜染の手拭を払って、頭からかぶった。
「なるほど」
と、小次郎も真似て袴腰に巻いていた小豆色の縮緬を、前髪のうえからかぶって、顎の下にたっぷり結んで下げた。
「伊達だな」
「よう似合う」
橋を渡ると、ここばかりは、往来も燈に染まり、格子格子の人影も、織るようであった。
五
暖簾から暖簾へ、小次郎たちはわたり歩いていた。
茜染の暖簾や、紋を染めぬいた浅黄の暖簾などもある。或る楼の暖簾には、鈴がついて、客が割って入ると、鈴の音を聞いて、遊女たちが、窓格子まで寄って来た。