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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

と平次。

「手拭に包んで、懐中へ入れて行きました」

岩松はスラスラと言って退けます。

「その手拭の模様は?」

「白と浅黄の染分けで、真ん中に橘の模様があります」

「フーム」

平次は思わず唸りました。

「それに違いないでしょう、親分」

岩松は番所の隅に小さくなっている弟の新吉を顧みながら、なんとなく重荷でもおろしたような顔をしております。

「その手拭はどこへやった」

平次は追及の手をゆるめません。

「血が付いたので、どこかへ捨ててしまいました」

「ところで、もう一つ訊くが、お前が入った時、お駒はどこにどうしていたんだ」

「長火鉢に凭れておりました」

「声を掛けたか」

「いえ、そんな事をしちゃ声を出されて失策ります。格子戸から飛込むと、障子を開けて、いきなり長火鉢に凭れているのを、後ろから突いてしまいました」

「格子を開けた時気が付かない様子だったのか」

「定ちゃんかい――と言いました」

岩松の話は、疑う余地のないほど判然しておりますが、平次は喜三郎と笹野新三郎を顧みて、何やらうなずき合いました。

「岩松、お前はとんでもねえ野郎だ」

「ヘエ、――相済みません」

「お駒は入口の方へ向いていたぞ。