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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
周りには、これも久しぶりで会う植田良平とか、南保余一兵衛とか、御池、太田黒などという古参門下が彼を取り囲み、
「お兄上とは、もうお会いになりましたか」
「ム。今会ってきた」
「お欣びだったでしょう」
「そう欣しそうでもなかった。部屋へはいるまでは、俺も胸がいっぱいだったが、兄貴の顔を見ると、兄貴もむッつりしているし、俺もいいたいことをいったりして、またすぐにいつもの口喧嘩だ」
「え、口喧嘩を。……それは御舎弟がよくない。お兄上はきのう辺りから小康を得て、すこし容態を持ち直して来たばかりのお体。そういう病人をつかまえて」
「だが……待てよ、オイ」
伝七郎と古参門下とは、まるで友達づきあいの調子だった。
自分をたしなめかけた植田良平の肩をつかまえ、冗談の中にも自分の腕力を示すように揺すぶって、
「――兄貴はおれにこういうのだぞ。――おまえは、おれの敗北をすすぐために、武蔵と立合うつもりだろうが、所詮、おまえは武蔵に勝てん。おまえが斃れたらもうこの道場までが亡ぶ、家名が絶える。恥はわし一身のことにして、わしは今度のこと限り、生涯剣を手に把らないという声明をして身を退くから、おまえはわしに代ってこの道場を支え、一時の汚名を、将来の精進で挽回してくれい……と、こういうのだ」