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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 508,883 characters · 1017 screens
「…………」
「もし、飽くまでおぬしがお通と添う気なら、この婆が首打ってそれからどうなとしやるがよい。わしの生きているうちは――」
「おばば!」
突っかかって来たわが子の権まくにお杉はまた、膝に角を立てて、
「なんじゃ、そのいいざまは」
「じゃあ訊くが……いったいおれの女房にする女は、おばばが持つのか、おれが持つのか」
「知れたことをいやる、わが身のもつ妻でのうてなんとする」
「……な、ならば、お、おれが選ぶのが、あたりまえじゃないか。それを」
「まだそのように聞きわけのないことばかり……。汝が身はいったい幾歳になるのか」
「だって……い、いくら親だってあんまりだっ、勝手すぎる」
この息子とこの母親とは、どっちも余り隔てを知らないために、ややともすると感情と感情ばかりが先に立って、感情を出した後から言語が出るという始末だった。そのためにかえって、お互いが理解をはぐらかし、すぐ角突きあいになるくせがあった。それはたまたまの場合だけではなく、家庭にあったむかしから、そういう家風であったが、まだ習性となっているのだった。
「勝手とはなんじゃ、汝が身はそもそも、たれの子か、たれの腹から、この世には生れて来たか」